「1日100万食」構想で高齢者給食業界を変える モルツウェルが挑んだ補助額最大50億円の大規模成長投資補助金

 

高齢者施設向け調理済み食品の製造販売事業を展開するモルツウェル株式会社は、「大規模成長投資補助金」に申請し、採択を受けました。本記事では、同社へのインタビューを通じて、高齢者施設向け食事提供のDX化を目指したスマート工場建設の背景と、その実現に至るプロセスをひも解きます。

 

自社単独では難易度の高い申請を、外部コンサルティングサービス「補助金クラウド」を運営するStaywayの支援により完遂し、採択に至った経緯や意思決定の裏側をご紹介します。さらに、補助金の活用が単なる資金調達にとどまらず、社内の意思決定の迅速化や将来構想の具体化といった副次的な効果をもたらした点や、本投資を起点に、業界構造の変革と介護食の質の向上、さらには地域社会の持続可能性に貢献していこうとする同社の展望についても迫ります。

 

今回は、モルツウェル株式会社の野津積社長、野津昭子専務、製造推進室の加本様にお話を伺いました。

 

左から、モルツウェル 野津専務、伊豆さん、加本さん、野津社長、Stayway 浜名

「10万食体制」実現へ モルツウェルが挑む大規模成長投資

 

補助金クラウド編集部:

今回の事業において、なぜ大規模成長投資補助金を申請されたのでしょうか?

 

野津社長:

現在、本社に隣接する敷地内に2階建てのスマート工場を建設する計画を進めています。この計画の背景にあるのは、製造能力の増強です。当社が属する業界は粗利率が低く、競争力を持つには一定以上の生産量を確保する必要があります。島根県内のセントラルキッチンで一日10万食規模の生産体制を見据える中で、その達成に向けた7〜8合目にあたる投資として、今回この工場建設計画を進めています。

 

補助金クラウド編集部:

量産体制の構築を目指された背景や、意思決定の経緯について教えてください。

 

野津社長:

第1工場は2022年9月に稼働を開始し、現在の生産能力は約3万食です。直近では前期比で7,000〜8,000食程度増加しており、この受注ペースが続けば、2026年中には既存設備のキャパシティを超える見込みでした。こうした状況を踏まえ、2024年秋の段階で、需要増加に先手を打つ形で第2工場の建設を決断しました。そのような中で、経済産業省から大規模成長投資補助金のご案内をいただき、申請に至りました。

採択率の高さと提案力が決め手に モルツウェルが補助金クラウドのサポートを選んだ理由

 

補助金クラウド編集部:

補助金の申請を社内で完結する企業もいらっしゃる中、なぜ今回、外部への補助金申請支援を検討されたのかをお伺いできますか?

 

野津専務:

率直に、今回の申請は非常にハードルが高いと感じたからです。周囲からも「不採択だった」という話を多く聞いていましたし、これまで何度か補助金申請を経験してきた中でも、今回は特に難易度が高いと感じました。申請までの期間も実質1か月ほどしかなく、特に補助事業計画では、35ページに及ぶ計画をパワーポイントでまとめ上げる必要があり、自力だけで対応するのは難しいと思いました。そのような中で相談に伺ったのが始まりです。

 

補助金クラウド編集部:

補助金クラウドの申請サポートを受けてくださった決め手はなんでしたか?

 

野津専務:

ご提案いただいた内容には非常に説得力があり、とても分かりやすかったことです。また、採択率の高さも大きな決め手でした。

 

他のコンサル会社からもサービス説明を受けましたが、対応の丁寧さとスピード感、そして担当者の明るい人柄などを総合的に判断して、補助金クラウドのサポートに決めました。

 

投資計画からプレゼン対策まで 補助額最大50億円の補助金申請を支えた補助金クラウドの伴走支援

 

補助金クラウド編集部:

補助金クラウドの申請サポートを受けてよかったと思われる点はなんですか?

 

野津専務:

補助金クラウドの担当者の方が明るくて対応が丁寧だったことです。そして何より、話の内容に説得力がありましたし、的を射たアドバイスをいただけて、対応もスピーディでした。採択されたという結果がなによりサポートを受けてよかった点です。

 

野津社長:

35ページにも及ぶ計画を通じて、「こう説明すればよいのか」「こう聞かれた場合はこう答えればよいのか」といった、ある程度の“正解の型”が見えたことが大きな学びでした。これまで経験してきた1億円規模の補助金では、ここまで高いレベルを求められることはありませんでした。今回は補助額最大50億円という大型の補助金だったこともあり、求められる水準が非常に高く、申請難度が高いとされる大規模成長投資補助金のレベル感を確かめることができたのは、今後の経営においても大変参考になったと感じています。

 

補助金クラウド編集部:

やはり振り返ってみても、大規模成長投資補助金の申請は他の補助金と比べて難しかったのですね。そのような中、他の補助金と比較して最高レベルの補助金のレベル感を知ることができたというのは大きな財産になりそうですね。サポートを受けてもなお、申請までのところで大変だった点はありますか?

 

野津社長:

プレゼン対策は特に大変でした。移動時間も、車の中でずっと練習をしていました。補助金クラウドの担当者の方から、「受け答えのパターンを事前に整理しておいた方がよい」とアドバイスをいただいたため、想定質問を一覧化し、自分の言葉でしっかり説明できるよう準備を進めました。そうした対策に最後まで伴走していただけたことは、本当に心強かったです。

 

加本さん:

私は、投資予算を担当しました。今回の工場建設にあたり、どの程度の投資予算をかけるべきかがまだ明確に固まり切っていない、“もやっとした”状態の中で、予算をどう設計するかが大きな課題でした。それに、1か月という短期間でまとめ上げなければならず、不安要素も多かったです。そうした中で、「どう整理すればよいか」をすぐに相談できる相手が身近にいたことは、とても心強かったですね。

単なる事務代行ではない、経営リソースを「最大化する」支援 補助金クラウドサポートの費用対効果とは

 

補助金クラウド編集部:

採択されたことで成果報酬という一定の費用が生じたかと思いますが、費用対効果としてはどう感じていらっしゃいますか?

 

野津社長:

費用対効果は高いと感じています。今回の補助金は、自社のみで申請していたら100%無理だったでしょう。特に今回は実質1ヶ月という超短期間のスケジュールでした。その中で35ページに及ぶ、極めて精緻な事業計画書を完成させる必要がありました。そうした中で、専門家の方たちと連携することで実務面の負担を軽減でき、経営者として本来注力すべき事業構想の検討に、より多くの時間とリソースを充てることができたと考えています。この投資によって得られた「採択」という結果と、事業の解像度の向上を考えれば、その費用対効果は非常に高いのではないかと感じます。

補助金採択が変えた経営視点と現場の自発性 未来志向の組織づくりへ

 

補助金クラウド編集部:

大規模成長投資補助金に採択されて以降、社内外からの反応や業務変化はありましたか?

 

加本さん:

当初、新工場の予算や設備選定は社内でも「ぼやっ」とした部分が残っていました。しかし、補助金の申請プロセスでは、どの機械にいつ、いくら投資し、それがどう生産性に寄与するのかを具体化しなければなりません。業者の方々と何度も無理を言い合いながら数字を詰め、1つ1つの経費やスケジュールを精査したことで、投資のリアリティが格段に増しました。このプロセスがあったからこそ、現在は社内でスムーズにプロジェクトを動かすことができていると感じます。

 

補助金クラウド編集部:

特に社内で大きな変化があったようですね。従業員の行動や意識などの変化を感じることはありますか?

 

野津専務:

今回の補助金は、「賃上げ」が大きなポイントでした。従業員たちの反応としては、単に「会社の投資のために補助金を活用する」という事実よりも、この賃上げに対するメッセージの方が響いたのではないかと感じています。具体的には、補助金の申請に向けて作り込んだ事業のストーリーやシナリオの一部を、「会社としてしっかりと賃上げをおこなっていくんだ」という全社向けのメッセージとして活用させてもらいました。補助金採択を一つのきっかけとして、改めて会社の方針を明文化して発信できたことは、従業員にとっても良い影響を与えられたのではないかと考えています。

 

野津社長:

補助金の申請書作成を通じて計画が立体的・具体的になったことや、採択により資金的な余裕が生まれたことで、第3工場までをも構想できる「頭の余白」が生まれました。通常であれば、第2工場の計画の推進に追われ、中長期の10年計画はありつつも、具体的に見通せるのはせいぜい5年先までが精一杯だったと思います。しかし、補助金という強力な後押しを得たことで、第2工場の計画と並行して、すでにその先の「第3工場の構想」にまで思考を巡らせる余裕ができました。こうした経営陣のスピード感や、より遠い未来を見据えた動きは、自然と現場の社員、特に生産技術の担当者たちにも伝わっていき、自発的に動く意識の醸成につながっていると感じています。

 

モルツウェルが目指す“1日100万食”構想 給食業界の新たなスタンダードへ

 

補助金クラウド編集部:

今後の展望を教えてください。

 

野津社長:

弊社は現在の1日10万食の体制から、10万食規模の工場を10拠点展開する「1日100万食」の構想を描いています。この規模の経済を支えるのが、多品種少量生産の壁を打ち破る独自の製造ロジックです。給食業界が自動化できない最大の理由は、毎日献立が変わり、1つのラインで何でも作ろうとするからです。これを「1工場1品目」の専業化へとシフトさせます。例えば煮物なら煮物専用のラインを構築し、ロボットによる自動投入から真空パックまでを無人化・高速化する。これにより、人手不足とコスト増を克服することが、高品質な食事を低コストで届ける唯一の解だと思います。

 

補助金クラウド編集部:

現在の給食業界の構造そのものを変えていこうという、大きな構想を描かれているのですね。こうした構想を抱くに至った背景について、教えてください。

 

野津社長:

老健施設における食費は、月額43,350円という基準額の枠内で運用されています。食材費や人件費が高騰する中、この固定化された価格の中で魚や肉の量・品質を維持し続けることが難しくなり、お年寄りに必要なタンパク質や「食べる喜び」までも損なわれかねません。私たちは、こうした制度疲労の“限界”を突破しなければならないと考えています。

 

私は、1996年に島根県松江市で持ち帰り弁当「ほっかほっか亭」フランチャイズ事業で独立起業しました。翌年には「あたたかい弁当の宅配モデル」をチェーンで初めて構築し、全国3,400店舗の中で売上1位を達成しました。前例が無かったため本部から契約解除を通告されましたが、売上1位になった途端、手のひら返しで「これからはデリバリーの時代だ!」と絶賛されました。圧倒的な1等賞を獲ると“ルールは変わる”ということを、身を持って体験しました。その後、FC全体・業界全体で「弁当宅配モデル」がスタンダードになりました。今度は、高齢者給食業界において、利用者と給食事業者が直接契約を結び、適切な対価で高品質な食事を提供できる新たなモデルを築きたいと思っています。そして、給食業界においても売上1位を獲得することで、その仕組み自体を業界の新たな標準へと変えていきたいと考えています。

 

 

補助金クラウド編集部:

業界構造そのものに課題意識を持ち、新たなスタンダードをつくろうとされているのですね。その挑戦を支えている原動力についても教えてください。

 

野津社長:

「ふるさと守り」をパーパスとして掲げている私たちの原点は、自ら調理ができなくなった独居高齢者に365日、笑顔と食事をお届けする「在宅高齢者配食サービス」です。松江市の北部には過疎地域に指定されている島根半島地域があります。効率だけを考えれば即、撤退すべき赤字エリアかもしれません。しかし、この地域に食事を届ける業者は10年以上前から私たちだけとなりました。私たちが宅配を諦めれば、独居高齢者の生活は維持できなくなります。慣れ親しんだ、彼らのかけがえのないふるさとは、いとも簡単に奪い去ることが出来るのです。この津々浦々に存在する小さな営みを見捨てない。だからこそ、全国の介護施設向け配食事業で収益基盤を築き、その利益を在宅配食、買い物支援事業というソーシャルな使命に投じたいと考えています。今回の投資は、この持続可能なエコシステムを守るための戦略的な一手だと考えています。

モルツウェルが語る補助金活用の本質と専門家活用の重要性

 

補助金クラウド編集部:

最後に、大きな投資を検討しているものの、申請になかなか踏み出せていない事業者の皆さまへ向けて、今回の経験を通じて感じたことや、お伝えしたいメッセージがあれば教えてください。

 

野津専務:

これまではコンサルタントの力は借りずに補助金申請を行ってきましたし、外部の力を活用することにも比較的慎重でした。しかし今回は、コンサルタントの知見やノウハウを効率的に活用することで、書類作成などの負荷が軽減でき、自分たちは計画策定の核となる業務にリソースを再配分できました。その点は非常に大きなメリットだったと感じています。

 

野津社長:

補助金をもらうために事業をつくるのではなく、まず自分が実現したい未来や事業が先にあり、そこに補助金という手段を当てはめる、この順番を間違えないことが重要です。強固なビジョンがあれば、補助金はそれを加速させる最高の追い風になります。

 

また、会社がここまで成長できた背景には、補助金という支援制度を有効に活用してきたことも大きかったと実感しています。補助金を積極的に活用し、専門家の知見を味方につけることは、自社の事業を後押しする大きな力になると思っています。

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